雑記 2023/03/18 売れたいのか?

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坂口恭平と千葉雅也(敬称をつけるべきか否かの判断はいつも難しいよね)のトークを聞いていた。
坂口の「俺にとってのコストとタイムだけしか考えない」という考え方は至極まっとうで、結局のところ(生き延びることも含めた)実現したいことと向き合い、実現に向けて無駄なく動き続けなければならないのである。
売れたいと考え、売れるために音楽を作るということが自分にとって何の意味があるのか、意味がないのなら無駄なのではないか、いや売れるための音楽と作りたい音楽が重なっているのならいいではないか、はたまたそもそも作りたい音楽とはどのようなものなのか、作りたいと本気で思っているのか、みたいなことをぐじぐじ考える時間。それを多少なりとも削減できる糸口を見つけたのかもしれない。
自分は売れたいと本気で思ってるわけではないと言い切れない理由が一つある。デカいフェスのステージに立てたら何か夢を一つ叶えたような気持ちになるのではないか、という疑念、あのステージに立って自分のグルーヴに大勢の聴衆を巻き込むイメージが脳裏に焼き付いて離れないという事実がそれである。それらの根幹にある欲望を何かと天秤にかけるには売れるしかない。売れてみるまで確認のしようがないのである。
で、それは確認して見る必要があった。ガチンコに実現したいことは生活と経済と趣味と歴史を統合する、みたいなことなのでは、と考えているのだが、統合するときに何をどう取捨選択するのかはまだリサーチの過程なので、「売れたい」みたいな意地っぽい部分のチェックも怠るべきではない。
いや、でも怠るべきではないと言いつつ、調査を怠るべきではない無数の項目のうちから取捨選択の末に売れたいという欲望についての調査を拾い上げたのだとしたら、やはり普通に売れて気持ち良くなりたいという欲望は自分にとってもはや根源的なものなのかもしれない。まあ調査項目の一つだ、と言っておけば少しは気楽に活動できるのだから一旦はそれでいいとしようか。
で、その調査に相方をつきあわせることの是非は、まあこれは友人関係の問題でもあるので文字通り是非も無いのだが、ただタイパ、コスパの問題で(もちろん同時に友人関係の問題で)、売れそうという期待をもてる人間であったことはたしかだ。直接にこいつは売れるぞ!なんて敏腕プロデューサー的なひらめきを得た訳ではないが、何かを期待させる力がある人間とたまたま意気投合する、なんてことは案外それほど頻繁に起きることではない。そのチャンスを自分の都合で掴み取ったことにやんやいう神はいない。
ただ、付き合い方の問題はある。自分は今まで事あるごとに「他者とコミュニケーションすることにしか何かを為すことに意味はない」みたいな話をする。だが自分はそこまで他者に開かれた人間ではない。気難しいやつだと言われることは多いし、他者と会話しててなにかの拍子にふと閉ざされみたいなものが心を支配することも少なくない。
よくよく考えてみると、自分がコミュニケーションしたい他者とは誰で、どれくらいの規模感なのか、は統合のプロセスにとって必要なリサーチだからやっている、というだけのことであって、コミュニケーションに一義的な価値をおいてるわけではないような気もしてくる。
まあそんな話をし出すと、じゃあ統合の先に他者はいるのかいな、という厄介な問いを引きずり出さざるを得なくなるので一旦ここは曖昧なところでとどめておこう。